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2018-10-04 14:51:01
【泣ける住宅購入】「やることやってる?」トップセールスに見透かされた新人営業
大型現場を担当することになった新人営業は、先輩営業よりチャンスが少ないと不平不満を口にする。
トップセールスの叱責と経験談で自らの行動を変え、お客様に出会えた新人営業のお話




「こんな大型物件はないぞ!」

上司や先輩が意気を上げる多棟現場に、新人営業の私も先輩方に混じって立つことになった。期待の大型現場に店舗の営業マン総出で取り組んだため、必然的にお客様を担当する機会が少なくイライラが募った。

そうなると自分でもよくわかっている悪い癖が顔を出す。ついつい無意識のうちに愚痴をこぼす機会が増え、よくない雰囲気を作り出してしまうことがあった。

喫煙所でトップセールスの先輩とふたりきりになった。

「お前、最近態度よくないぞ。」

掛けられた声に、正直な気持ちは“余計なお世話だ”だった。私が言葉を返せる訳もなく重苦しい沈黙が続くと、先輩はゆっくりと口を開いた。

「俺が新人の頃は、先輩が休む日をチャンスだと思って現場に行っていたよ。そういうことやってる?やってないよね。」

上からガツンとくる感じではなく諭すような叱責は説得力があり、自分でも驚くほどすーっと染み入り、不平不満を口にしていることが恥ずかしくなった。

“確かにそうだよな・・・。トップセールスも経験してきたことだ。明日の休み、誰もいない現場に行ってみよう!”

少し前向きな気持ちになれた瞬間だった。



翌日、午前中から現地販売の現場に入った。ただ火曜日ということもあり、お客様が来場する気配はまったくない。時が経つごとに後ろ向きの気持ちは強くなっていった。

(そんなに甘くないよな・・・。)

心の声が口から漏れそうになる。そんな気分を晴らすため多棟現場に建てられたモデルハウスの内部や周囲を掃除したり、整理整頓したりと体を動かし続けた。

「やってるねぇ。俺は嬉しいよ。」

そう言って突然現れ私に缶コーヒーを手渡したのは、前日に私を鼓舞したトップセールスの先輩だった。自分の言葉が後輩に響いたのかを確認するだけのために、休日にも関わらず私の様子を見に来てくれたのだった。先輩の陣中見舞はとても嬉しく、モチベーションを取り戻した私はものの見え方も少し変わったような気がした。



2台のロードバイクがモデルルームにいた私の視界に入った。この時、考えるよりも先に自然に体が反応した私は、すぐさまモデルルームから飛び出るとロードバイクにまたがったまま何かを見ているふたりに声をかけた。

やや年配のご夫婦は、いないであろうと思っていた営業マンがモデルルームから現れたことに少し驚いたような表情を浮かべた。

「火曜日しか休みが取れなくて、いつも営業さんいらっしゃらないのでビックリしました。」

サイクリングを趣味とするご夫婦は、よく走っているサイクリングコース沿いにあった大きな更地が以前から気になっていたという。詳しい話を聞きたくても仕事の都合で休みが火曜日しか取れず、更地を眺めながらご夫婦の会話を楽しむサイクリング途中の休憩場所になっていたのだった。

初めてモデルルームを見学したご夫婦は、ふたりのお子様も社会人となって独立した生活を送っているため間取りや広さへのこだわりはなく、最も求めやすく注目される目玉物件を購入検討したいと資料を求めてきた。

道路拡張による立ち退きが迫っているというご夫婦は、私の説明に1時間ほど耳を傾けると、大事そうに資料をバッグに忍ばせてロードバイクで走り去っていった。



3日後には、ご夫婦から申し込みいただくことができた。ただ、決済方法が多くのお客様が選ぶ住宅ローンではなく、道路拡張の立ち退きによる補償金を充当させるため契約までに先の見えない時間を要することになった。

他のお客様からも引き合いの多かった目玉物件のため、契約優先にしたいところを売主様は1ヶ月半もこのお客様を待ってくれた。

“結果を出せたのも先輩の言葉があったから。”

そう思った私は先輩に感謝の気持ちを伝えると、自分のことのように喜んでくれた。

「お客様、店長、売主様にも感謝しなくちゃいけないよ。」

売主様が契約を待ち続けてくれたのは店長のサポートがあったことを私はこの時にはじめて知った。

“自分ひとりじゃ何もできないな・・・。”

これを機会に、不平不満を口にして周囲を乱していたダメな自分とサヨナラした。


すべての人々に感謝


「いろいろご迷惑をかけました。ありがとうございます。」

お客様から感謝の言葉をいただいた。でも、感謝しているのは私もいっしょだ。そして、お客様はもちろん関わってくれるすべての人々に感謝できるようになった。

先輩の叱責。
お客様との運命的な出会い。
売主様のご理解。
店長のサポート。

同じように悩む後輩に出会ったら、尊敬するトップセールスの先輩のように自分の経験を伝えられる人になりたい。