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2018-03-09 10:35:07
【泣ける住宅購入】疑いから入ってきたご主人とマンション派の奥様が住みたくなった新築戸建
「疑いから入っていますよ。」が第一声の慎重なご主人とマンション派の奥様。
その裏側に秘められたものを払拭した新築戸建と営業の話




春の訪れはまだ先の寒い時期。10棟建ての現地販売会にご夫婦が現れたのはすでに薄暗い16時ごろだった。

「疑いから入っています。」

それがお客様の第一声。少し近寄りがたい雰囲気を醸し出すが、私にとっては接客しやすいハッキリと意思表示をするお客様だった。

「疑問がありましたらそのまま持ち帰ったりせず、なんでも聞いてください。」

そう伝えて、ご夫婦に物件の案内を開始した。



外壁を貼り終えたばかりの物件を、資料をもとに間取りや方角、日当たりなどを一通り説明した。

「家探しで最初に見る物件なので・・・。」

“疑いから入る”とは慎重なことを意味しているのだとその時に理解した。そんなご主人からはほとんど質問がなかった。ただ、無言だったわけではなく、生まれたばかりの女の子を近所のマンションに住む奥様のご両親に預けてきたことや物件とは関係のない会話でコミュニケーションを深めていった。

「新居を買うなら、私がマンション派で、主人は戸建て派なんですよ。」

そう話した奥様は、生まれてからずっとマンションで生活してきたという。一方のご主人は、戸建ての実家で過ごし、その後はアパートやマンションで生活してきたという。

「どう思います?」

第三者の意見を聞いてみたかったのだろうか。あるいはご主人の意見だけで戸建てを選択したくない気持ちがどこかあったのだろうか。戸建てを仲介する営業にそれを尋ねてきたことが少しおかしかった。

子供は走り回り、泣き叫ぶのが当たり前。でも両隣だけでなく上下階の住人に迷惑をかける。子供をのびのび育てたかった私は迷わず戸建てを選んだ経験を伝えた。

「そうそう!」

奥様にも思い当たる節があったのだろう。“子供が出す生活騒音”が奥様をマンション派から戸建て派に引き寄せた。ゴミを出す場所は?管理費は?矢継ぎ早に質問する奥様をご主人が嗜めるほどだった。

気付けば19時。3時間も話し込むのは珍しい。翌週の来店を約束すると、ご夫婦は生まれたばかりの女の子が待つ奥様のご実家へ向かった。



翌週、店舗であらためて物件をプレゼンした。完成イメージ図で夢が膨らんだのは奥様だった。内装のイメージが奥様の好みにピタリとはまったらしい。

そんな奥様にブレーキをかけるのがご主人の役目だった。“これでは決めません”と語るご主人には他の物件を資料で説明し、先週見た物件の優れている点を説いた。10棟のうち半分は成約され、2〜3件の商談もまとまりつつあることも正直に伝えた。もちろん焦らせるものではないことを慎重派のご主人に伝えた。

「来週、もう一度見に行ってみます?」

その問いに、即座に反応したのはやはり奥様。でも、その反応に慎重派のご主人がブレーキをかけることもなかった。

現地で待ち合わせた二度目の見学。二週間でより完成に近づき階段が使えたのはいいタイミングだった。3階へ上がっていったご夫婦はしばらく降りてくる気配がなく、私は1階でふたりをじっと待つことにした。

30分ほど経っただろうか。階段からペタンペタンとリズミカルなスリッパの音が聞こえてきた。

「親にも見せたいので、来週も見られます?」

それも慎重派のご主人らしい親御さんへの配慮だった。



最初に現地販売に来場されてから三度目となる見学にはご夫婦それぞれのご両親の姿があった。

「2〜3日前に、あそこの窓つけていたよね。」

そう語ったのは近所に住む奥様のお父さんで、何度か足を運んでいたようだ。一方、ご主人のお父さんは、ビルの配線工事を請け負う職人さんの目線で物件をチェックした。

「木造は、こんな感じなんだ。へぇ。なるほどねぇ。」

小一時間ほどだっただろうか。それぞれが完成間近の新しい家を見学し終えると、ご主人にお父さんがひと言伝えた。

「契約みたいに面倒臭いのは任せた。俺は帰るからな。」

その言葉に奥様のご両親も頷いた。

「ねっ、戸建てもいいでしょ?」

マンション生活の長いご両親に問い掛けた奥様の横で、それまで常に慎重で緊張感の漂っていたご主人の表情が、今までにない安堵の表情に変わっていたのがとても印象的だった。


疑いと不安を抱いていたお客様


その後、契約から引渡しまで何事もなく経過した。それからしばらくして、ご主人から携帯に着信が入った。

「わかります?」

契約前とは違って“同じ人?”と思わせるくらい明るいトーンだった。役所に提出する書類に関する問い合わせだったが、話は少しそれていった。

「疑いから・・・なんて言ったと思うんですけど、不安もあったんです。あなたのことは最初から信用していましたから。」

そんなことをさらっと明るく言えるご主人。快適に生活している様子が伝わってきたのがとても嬉しかった。