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2017-09-11 12:00:36
【泣ける住宅購入】16歳の少年と15年の物件探し
15年間物件を探し続けたお客様
その長い物件探しには、16歳の少年を中心とした家族の思いやりがあった。
先輩が成し得なかった契約にたどり着いた若手営業のお話です。




「もう何年も前からハウスプラザさんにお世話になっています。」

女の子を連れたご夫婦は物件を見学しながらそう伝えてきた。ひと通り眺めると「これも違うな」とご主人が呟いた。

周辺物件も紹介したが、どれも響かず、見学済みの物件もあったほどだ。さすがに長年探しているだけあって物件に詳しい。
入社2年目の若手営業である私は、お客様に熱意を感じ「条件に見合う物件を探しますので、ご提案させてください。」と伝えると、これだけは守って欲しいと念を押された。

「投函と訪問は絶対にしないでください。」

翌日、そのことを上司に報告すると「あぁ、そのお客さんか・・・」と少し訝しげな表情になり話してくれた。
4人の営業が担当したこと。15年は探し続けていること。投函・訪問をさせない上司の見解などなど・・・。

それでも「やってみなさい。」という上司の言葉が励みになった。


じっくり探しているだけあってお客様の物件を見る目は高く、とても手厳しい条件だ。地域、間取り、広さ、部屋数など。
こだわりの強い条件がおさまる物件は、なかなか見つからない。なかでも、部屋数は年月を重ねるたびに譲れない条件になったという。

2DKの社宅にお住まいというお客様は、ご夫婦、高校1年生で16歳の長男、中学2年生の次男、小学3年生の長女、一緒にいた1年生の末娘という6人家族。

物件探しが長くなってしまったのは、金利や物価の影響もあるが“子育てに追われてしまったことが一番大きな理由”と家族構成を話しながら教えてくれた。

そして「投函と訪問は絶対にしないでください。」という理由も明かしてくれた。

「2〜3年前まで、家族6人で家を探していたんです。新しい家、自分だけの部屋を目にした子供は大喜びしますよね。でも、条件面など折り合いがつかなくて・・・。とくに上の子は物心もついていたので、何度もガッカリさせてきました。もう、そんな思いをさせたくないんです。」

“子供に不動産を探していることを知られたくない親心”だった。

そのふたつのことを上司に報告すると「わかった。いっしょに提案しよう。」となり、最適な物件を探し出してくれた。少し小さめではあるが、お客様の条件にかなり近い物件だ。

その物件にお客様を案内すると案の定「少し小さいかな・・・」という言葉。しかし、それ以外の条件を全ておさえている。もちろん、こだわりの部屋数もだ。

しばらく考え込むお客様を私はじっと見守った。物件探しのベテランに2年目の若手営業が口を挟む余地などない。

(周辺土地価格の上昇、低金利、条件との照らし合わせ、そんなことを考えているんだろう)

やがてお客様から「ここにします。」の声が聞かれ、申し込みの手続きへと進むことになった。しかし、一つ頼みがあるという。

「契約前にもう一度見せて欲しい。息子たちを連れて来たい。」

もちろん異論などない。


契約前の見学会に、初めて家族6人全員が揃った。スレた感じのない素直そうな16歳の少年は、目の前の新しい家を「どうせ、まただろ・・・」という疑いの眼差しで眺めている。

「自分の部屋ができるね。」

そう語りかけても、反応はイマイチ。過去のこともある。でも本当にそうなるかもしれない。16歳の少年では、うまく表現できないこともある。自分もそうだった。それが思春期だ。

「今度は、間違いないと思うよ。」

契約など解るはずもない16歳の少年は半信半疑だったに違いない。


申し込み以降は、順調だった。ご夫婦の間では、申し込みの時点で契約する決心はできていた。
ただ、物件を見ていない4人の子供への道理と、家族全員で決める機会を設けたかったという。
それを物件引渡し一週間前の内覧会で話してくれた。そして、内覧会には16歳の少年もやってきた。

「自分だけの部屋、うれしいでしょ?」
「ええ、まぁ、うん・・・」

思春期らしい反応だ。自分が高校生だった頃を思い出す。

「僕もね、自分の部屋に友だちが来た時はうれしかったな。はじめて彼女が来た時はね、すっごく緊張したんだよ。」

そう伝えると、少年の表情が少し緩んだ。しばらくして、自分の部屋となる場所で、ひとりっきりの少年を見かけた。

声を押し殺しなから、満面の笑みで喜びを爆発させていたように見えた。

近い未来の自分を想像していたのかもしれない。

はじめの苦労が身を結んだのかも

あの時に上司から「やってみなさい。」と励まされなかったら、
変に経験を積んで出会っていたら、
同じような接客はできなかったかもしれない。
入社からしばらく実績を作れなかった苦い経験が、諦めない営業につながったと思う。

今もその営業スタイルを守り続けている。